原発事故被害者相双の会の会報133号が届きましたので転載します。

家族全員で南相馬市小高区から埼玉へ避難しています。
息子は避難先の埼玉で就職しました。
自分としては根っから の農業一筋で、避難生活では何もやることがありません。
母は事故前までは炊事担当で元気でありましたが、避難生活になってからは体調を崩し施設に入るようになり、5年前に亡くなりました。

自分達は時々避難先から小高に帰っていましたが、農地は放射能で汚染された土地へ野菜、果物栽培は無理だろうと思っていました。
避難生活で生活リズムが狂ってしまった事もあり病院通いが多くなりましたが、それでも、いつも考えていたのは交流人口が少しでも拡がれば、という思いです。
そんなとき「バラ園をやらないか」と誘いがあり、何の作物もつくることもできないので「やってみるか」と、なり5年前から始めまし た。
埼玉から通いながらの手入れは大変ですが、多くの人に見てもらう喜びと避難したまま帰ってこない家族の多い集落でもあるので、皆さんに会うきっかけになればと思っています。
そんなことを夢見ながらバラの手入れに余念がありません。
マスコミからも取り上げてい ただき満開時は県外からも観に来ていただき大盛況でありました。
お陰様で体調の方は多少取り戻すことが出来まし た。

富岡から都会へ住み震災一年前に退職し、実家に戻ってきました。
長い間実家を離れていましたが、周りは親類が多くいろいろ相談をしながら余生を過ごすことができると安心しきっていました。
ところが、思いがけない原発事故で避難生活が強いられてしまいました。
避難中に両親はふる里に帰れないまま亡くなってしまいました。

2017 年に避難が解除されましたので帰還しましたが、周りは殆んど帰ってきません。
当然のことですが、人がいないという事は周りが荒れ果ててきます。
町当局は「帰ってこい」というが、帰ってきている者への手立てはあまりにも疎かです。

現在の富岡の居住人口は 2000人と言うものの、どちらかと言えば東電関係作業員の居住者の方が多いと思います。
事故から12年も過ぎてしまったのですからそれぞれが避難先で生活基盤が出来てしまい、もうもどれないのだろうと思います。

汚染水が海洋放出されるといわれています。
富岡町には小さな漁港がありますが活用されていないかも知れません。
遊漁船は2艘ぐらいあると思います。

事故から 12年過ぎてようやく魚介類 が「常磐もの」として復活し、小名浜港などが順調になりつつあるのに放射性物質の汚染水を海洋放出するなど許されることではありません。

また、箱物をどんどんつくられていますが、必要なのでしょうか、金の使い道が間違っているように思います。

大熊、双葉、浪江の皆さんの声

避難解除はどんどん進み、外見は立派な建物が建ち、いかにも地域が活気づいているかのように報道されています。しかし本当はどうか。5月22日に地域を一周してお会いできた皆さんの話を聞きました。

大熊町へ入ると、作業員は見かけますが居住者は見かけません。
役場周辺の災害公営住宅に行きましたが、働きに行っているのどうかか分かりませんが人影がない。
それでも役場、郵便局、食堂街があります。
それに大きな 建物が建設中です。何だろうと思い近 くにいたお婆さんに聞いてみたら「小学校と中学校だ」とのこと。

「児童生徒数は何名ぐらいですか」 と聞くと「20 名ぐらいと聞いています」というのでびっくりです。
どう見ても児童生徒数が 200~300 名ぐらいの学校に見えます。
予算金額は予想を絶する予算だろうと思います。
復興のためにとは分かりますが、実態として子供たちが戻ってくるでしょうか、それでなくても急速な人口減に突入していることを考えると、どこか間違っているような気がします。

双葉町に入り駅と役場前で約 30分ほど休んでいましたが、ほとんど人影がありません。
役場への出入もありません。
当然のことです。
居住人口は 60人そこそこですから、浪江町に入り車で走っていましたが、作業員の姿は多くありますが、浪江住民はなかなか見つかりません。
ようやく見つけることが出来ました。
真新しい家に70代夫婦が住んでいました。

「何時帰還したのですか?」、「会津に6年、その他転々と避難して去年のお盆ちょっと前に帰ってきた」。「元気で良いですね、息子さんたちは時々来るでしょう?」、「事故前は一緒に住んでいたがいろいろ考えてもしょうがねいから元気なうちはこうやっているしかね」。
いかにも元気にふるまっているようでした。

汚染水の海洋放出は緩慢なる殺人行為
北海道がんセンター名誉院長 西尾正道

国は、「水と同じ性質を持つため、人や生物への濃縮は確認されていない」 としていますが、果たして本 当でしょうか。4月1日に相馬市で開催した講演会での西尾正道先生講演の一部を紹介します。

世界各地の原発や核処理施設の周辺地域では事故が起こっていなくても、子供達を中心に健康被害が報告されており、その原因はトリチウムと考えられる。

特にトリチウムを大量に放出するカナダの重水(じゅうすい)(重水と軽水の違いについて、一言で表すなら、軽水が通常の水、つまり H2Oであるのに対し、その2倍の質量を持ったものを重水 D2O)を用いるカナダ開発した原子炉では稼働後に小児白血病やダウン症や新生児死亡の増加があり、住民の実感として問題となった。

日本でもトリチウムを大量に放出する加圧水型原子炉である玄海原発や泊原発では明らかな健康被害のデータが示されている。
1970~1980 年代には、トリチウムが染色体異常を起こすことや、母乳を通して子どもに残留することが動物実験で報告がされている。

また平成 15 年3月には、小柴昌俊氏 (ノーベル物理学者)と長谷川晃氏 (マックスウエル賞受賞者)が連名で、当時の総理大臣小泉純一郎宛に、トリチウムを燃料とする核融合炉は、安全性と環境汚染性から見て、極めて危険であり中止するよう『嘆願書』を出している。

トリチウムが深刻なのは、水素として 細胞の核に取り込まれることがわかっている。
核の中にある DNA(デオキシ リボ核酸)を構成している四つの塩基 (えんき)(アデニン、シトシン、グアニ ン、チミン)は水素結合力でつながり、二重(にじゅう)螺旋(らせん)構造(こう ぞう)を形成し遺伝情報を含んでいる。
結合させている水素がベータ線を出す。

だったら、遺伝情報を持つ最も基本的な DNA に放射線が当たり、また4つの塩基をつないでいる水素結合は破綻する。
そしてトリチウムがヘリウム(風船などに使われる空気より軽い)に元素変換することにより塩基の本来の化学構造式も変化する。

これが健康被害に繋がるのです。
こうした有機結合型トリチウムの存在を考慮すれば、トリチウムは危険であり、全世界の人類に健康被害をもたらす。
海洋投棄は静ななる緩慢(かんまん)(動きが遅い)な殺人行為なのです。

是非ご投稿をいただき「声」として会報に載せたいと考えています。
◇電話 090(2364)3613
◇メール(國分) kokubunpisu@gmail.com

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