3月30日(水)原発事故被害者「相双の会」会報47号が届きましたので、転載します。

相双の会47号1-1
「健康に影響ない」というが
安倍内閣は居住制限区域、避難解除準備区域を 2017年3月で解除する方針です。
今の時点で解除が良いのか悪いのか考えろといわれても、避難者の立場からすれば事情は複雑で混乱するだけです。
だいたい低線量による障害も分かりません。
いかにも当然のように「影響がない」という学者先生がいますが、まだ原発事故が起きてから5年です。
データーもないにも関わらず「大丈夫」「健康に影響はない」という判断はあまりにも軽率で無責任ではないでしょうか。
福島県の「県民健康調査検討委員会」の発表(別掲)だけ見ても、「健康への影響」などは何年もたたないとわからないのです。

「放射線管理区域」の基準を無視するのか
避難解除に向けて4万Bq/m2以上は放射線管理区域であるという法律はどうなるのでしょうか。
チェルノブイリでの放射線管理区域は3.7万Bq/m2で地上1mでの空間線量は 0.13μ Svとなっています。
解除しようとしている居住制限区域、避難解除準備区域について多くは4万Bq/m2以下になっていないのが現状です。
私たちの調査ではほとんどの地域が民家の庭先で4万Bq/m2以上であることが明白になってきています。
高い所で110万Bqとなっています。
私たちの生活圏内である里山となればまだまだ線量が高くなるだろうと予測されます。

これで法治国家なのか?
国民が法律を破ると国家は処罰する。
それなら、法律を守るのは、国家の最低限の義務ではないでしょうか。
●日本では、一般人は 1年間に 1ミリシーベルト以上の被曝をしてはいけないし、させてはいけないという法律がある。
●放射線管理区域から、1 m2あたり 4 万ベクレルを超えて放射能で汚れたものを管理区域外に持ち出してはならないという法律もある。

日本は本当に法治国家と言えるのかと疑問です。
私たちは解除するなと言っているわけではありません。
解除するならば、住民の命と健康を第一に考え法律にもとづいた安全な状態をまず達成してほしいだけです。

相双の会47号-2

統計によれば0~18歳の甲状腺がんは多くて年間 100万人に3人です。
しかし福島県の先行検査(原発事故後 2011~2014年に一巡目として実施)では、「がんまたは疑いあり」とされた人は、事故当時0歳から 18歳であった対象者 30万人当たり115人いました。
これだけでも他県と比べて多いのではないかという専門家の声がたくさんあがっていました。
さらに、今年2月15日に開かれた福島県の県民健康調査検討委員会で、また甲状腺がんの増加が報告されました。
同じ対象者で2015年に実施した2巡目に当たる本格検査23万 6595人の結果が確定し、甲状腺がん又はその疑いがある者は新たに 51人(内男 21人、女 30人)と発表されました。
内 16 人がすでに手術を受け、全員が乳頭がん(甲状腺がん)でした。
1 巡目と合わせると「がんまたは疑いあり」の数は計166人になりました。
51人のうち 47人は1巡目の検査で「異常がない」とされた A1 ないし A2 判定(他の2人はB判定)であり、2~3年間で識別できるレベルのがんに進行したことになります。
専門家は、事故とがんの多発の関係は、時間をかけないとはっきり言えないと指摘してきました。
その通りになっています。
あと数年たつとどういう結果が出るか、本当に心配です。

相双の会47号-3

30年間も『放射性廃棄物施設』に反対運動

原発事故の放射性廃棄物の最終処分場をどうするか、大問題になっています。
福島原発事故より 30年も前から北海道幌延町では「高レベル放射性廃棄物施設」反対運動が続けられてきました。
そして住民・自治体の強 い反対で白紙撤回されましたが、1999年に核燃料サイクル開発機構の「深地層研究開発」施設の建設を道が強引に認めてしまいました。
しかし住民の反対に配慮して「核のゴミはもちこまない」「20年程度」等の条件付きでした。
ところが政府が、福島原発事故で発生した廃棄物の「最終処分場」を「国主導」で16年度中に提示するとしたのに呼応するように、幌延の施設(その中には巨大な深い穴もある) を延長する動きも出てきました。
改めて住民は「20年程度で廃止、穴は埋め戻す」と「最終処分場の選定をさせない」よう道に求めています。

 

日本で「最終処分」などできるのか

その中心になっている「高レベル放射性廃棄物施設誘致反対稚内市民の会」から、福島の被害の話を聞きたいとのことで、お招きを頂き稚内に行ってきました。
今冬は雪が少ないと言っても一面真っ白でした。
天気に恵まれ素晴らしい風景、特に稚内から見た礼文島の雪景色と利尻富士には魅せられてしまいました。
30年も前から原発が発生させる廃棄物の持ち込みに闘ってきた人がいる事が勉強になりました。
兵庫県から移住してきた久世さんは、仲間と福島被災地の子どもを春休み、 夏休みに受け入れている事に感銘しました。
幌延町の「深地層研究施設」では 2013年2月に、地下 350mの坑道内で火災・爆発の危険があるメタンガスの濃度が上昇し、作業員が避難。
地下水も大量の増水となり地下深くなればなるほど軟弱な地層になるのではないかと懸念されています。
こんなところで放射性廃棄物処分など出来るわけありません。
私達福島の住民だけでなく、日本中で放射能の危険におびえています。
そもそも狭い日本で原発を稼働させることが間違っているのです。
(國分富夫)

相双の会47号-4

なぜ避難指示解除をいそぐのか
東京新聞は小高区にある「相双の会」会長の國分富夫宅に連日訪問し熱心に取材してくれた。
そして3月9日付けの「こちら特捜部」で見開き2面分使って、実情を報じた。
避難している女性五人の声をこう報じて いる。
「衣料品店を営んでいた志賀貞子さん(71) も戻らないと決め、来月、原町区の災害公営住宅に入る。
娘夫婦が震災後、東京に移転し一人暮らし。
『病人も商店もない。とても生活できない』と判断した。
『亡き夫が残してくれた土地を守りたい』という思いから、5人の中で唯一戻ることを 決めた馬場ノブ子さん(77)も不安は大きい。
将来の家賃補助打切りなどを見越して、帰還を決めたが『放射能への怖さも半分はある。
喜んで帰る気分になれない』と語った。
市民の間には、避難指示の解除を急ぐ政府への不満が高まっている。

安倍首相に直談判
『除染は終わっていない、解除は早すぎ る』。
市内で避難生活を送る小高区の松本裏子さん(75)は五日、JR 小高駅を視察に訪れ た安倍首相に直談判した。
隣の女性も『小さい子がいる。学校の周りに黒い袋が沢山ある。
(フレコンパック)見てください。帰るのは不安』と必死に伝えた。
だが首相は『頑張ります』と繰り返し、次の視察先に向かった。

『この日のためにきれいに掃除した駅だけ見ても、小高の現状はわかるわけない』と松本さん。
時々自宅に帰り、チューリップなどの花を植えている。
『震災から5年は永いよねえ。人生が狂ってしまった。帰りたいけれど帰れない。せめて町を明るくできれば』。

 

相双の会47号-5

東京電力福島第一原発事故の被害者約3900人が参加する「生業(なりわい)を返せ!地 域を返せ!」福島原発訴訟(生業訴訟)の裁判で、福島地方裁判所は3月17日に、避難指示区域内の原告宅の現地検証を実施した。
裁判所による現地検証は、原告側が、長期かつ大規模な原発事故の被害を「五感で感じてもらうため」に求め続け、実現にこぎつけたもの。
被告の国と東電は、一部の原告の状況を見ても全体を代表するものとはいえない、現場に行かなくても映像や各種報道で確認は可能なので 現場検証は不要などと主張していた。
現場検証には福島地裁の金沢秀樹裁判長、西村康夫、田屋茂樹両裁判官のほか、被告の国と東電から26人の弁護士などが同行。
浪江町の居住制限区域にある佐藤貞利さんの自宅と畜舎、双葉町の帰還困難区域にある福田祐司さんの自宅、富岡町の居住制限区域にある女性宅の3か所を訪れ、本人や原告代理人から現状の説明を受けた。
「相双の会」からも大勢の原告が参加している、『原発避難者訴訟』裁判でも、福島地裁いわき支部の裁判官に対し、再三被災地の現場検証を求めてきた。
しかしかたくなに拒否されてきた。これを機にあらためて強く要請していくことになろう。

相双の会47号-6

>>PDFはこちらから