原発事故被害者「相双の会」会報93号が届きましたので、転載します。
そこで山から流れ出た土壌を測定したら
これまで検出されなかった路上などに 溜まった土壌を測定したら異常なほど放射能が検出されました。
このように 500ベクレル、高いところで 43,000 ベクレルありました。
ほんの一部の汚染地域を測定しただけです。
大半は川に流出したと考えられますが、双葉郡全体を調査、測定をしたら誰でも大変なことである事が想像できると思います。
放射能が拡散された訳ですから、国、電力会社は責任をもって対策すべきです。
これだけは知って頂きたい事は、測定にあたり高そうな場所を探して採取した訳ではなく、測ったらこうだったのです。
原発事故前に戻るには 200年から 300年ということです。
小高区川房流域数値は 42,958.02Bq でした。
40,000 Bqが 30年で 20,000 Bqへ、 60年で 10,000 Bqへ、90年で 5,000 Bqへ ……300年で 39 Bqへと減ってゆきます。
原発事故前は10~20Bqだったのですからとんでもない数値です。
これが原発事故なのです。
乾燥して風の吹く時はマスクで対策を
台風で大量に平地や河川敷に流出した汚染土壌が道路や畑などに残っています。
それが乾燥すれば特に風の時は粉塵となって舞い上がります。
乾燥された土壌の測定結果、水分の残った未乾燥の土壌の線量(Bq)の方が高いことが判明しました。
口、鼻から入れば内部被ばくしますから要注意です。
これからが本番の季節風が吹き荒れます。
彼岸となれば墓掃除、墓参りと故郷に来る機会が多くなるでしょうから、マスク使用をお勧めします。
参考に乾燥しない(水分含む)土壌と乾燥した土壌の測定結果を記載しました。
未乾燥 9,019.5 Bq … 乾燥 19,097 Bq
川房四ツ栗 96
未乾燥 3,077.8 … 乾燥 4,224 Bq
川房西畑(畑の中)
未乾燥 4,735,8 Bq … 乾燥 8,070,9 Bq
だから粉塵は危険です。
特に若い方、子どもは注意が必要です。
放射能は原発などから屋外へ出てしまった場合取り除くことは到底できないので自然消滅を待つ他ないのです。
除染、 除染と言いますが除染で取り除くことは できません。
除染という言葉は「汚れ」を除くという意味ですが、原子力の場合の「汚れ」 は放射性物質による汚れであり、放射能を消すことはできないので、言葉の本来の意味で、除染はできません。
国民の命と健康を脅かす放射能を避けることはできない環境にしてしまった国、 電力資本を許すことはできませんが、自ら管理を怠る事ができない世の中になってしまいました。
白血病患者数は福島が多い
各都道府県の国公立医師会によると、 昨年の4月から 10 月にかけて「白血病」 と診断された患者数が一昨年の約7倍にのぼったことが判明したとのことです。
原発事故との因果関係は不明としながらも不自然と思わざるを得ません。
患者の80%が東北・関東で福島が最も患者が多いのです。
放射能というのはどんなに微量でもそれなりの危険があるということを覚悟しなければいけないのであって、安全とか、 安心とか、大丈夫とか、そういう事はあり得ないと考えるのが妥当でしょう。
8000 Bq以下なら「再生利用」?
放射性物質は除染をいくら繰り返しても拭いきれない事は、事故後9年で明らかになった。
地域住民も拭いきれない事が分かってきた。
除染土壌が 2200 万立方 メートル…これは東京ドーム約18杯分にもなる。
これも増え続けている。
仮置き場は 1,328 箇所あったが、中間貯蔵施設に運び込まれたから大分減りはした。
しかし、そこにも入り切れない事は当初から分かっていた。
現時点では中間貯蔵施設計画地の7割程度が確保できている。
30年後に県外の最終処分場に搬出するという法律に裏付けられた約束があるが、 まだ決まっていない。
受け入れる自治体などあると考えられない。
不可能に近い事である。
今となって考えられるのは、「最終処分場」というのは中間貯蔵施設建設の大義名分であった。
そうでなければ反発を受けるだけになった。
除染土壌の行き先がなくなったので、 特別な法律を作り 8000 Bq/kg以下を一般廃棄物として処分可能にした。
通常の原発から出る廃棄物は一般の廃棄物処分場では扱えないが、一定の基準(100 ベクレル)以下は市場流通が可能となっている。
たとえばコンクリートや鉄筋・鉄骨などの金属がこの対象だ。
これにたいして基準8000ベクレルは緩すぎ、100ベクレルで統一しないと二重基準になると批判が出ていた。
環境省は、 8000ベクレルは「処分できる基準」、100ベクレルは「再利用の基準」だと説明してきた。
ところが、処分場の確保の困難 が見えてくるや、8000ベクレル以下を公共事業への「再利用基準」とした。
環境省は、南相馬小高区において「再生利用実証事業」を、飯舘村においては農地としての実証事業を行い、再生利用に向けて「手引き」を作成する方針である。
全国に放射能をばらまくつもりか
第一原発の事故で自然界にはない放射性セシウムが放出され、中でも長く残存する放射性セシウム 137 が生物に影響する。
セシウム 137 は原発事故前の値に戻るには200~300年と言われるから 今に生きる私たちにはその悪影響の結果は確認できない。
それだけ後世に負担がかかることは確実である。
原発を推進した国や電力会社は無責任というより他ない。
大量の除染土の行き場がなくなり、 「8000 Bq以下を一般廃棄物とする」という法律をつくり全国の公共事業に使用する、放射能のバラマキである。
放射能はいくら低線量であっても危険であり、安全であるという値はない。
それでも国民を誤魔化し実行しようとする根拠は何なのか。
狭い日本に 52基の原発を稼働した。
それに建設中でもある。
いずれ廃炉原発がどんどん出てくる。
このまま進めば必ず事故が起きる。
最終処分場が必要であるが、日本のような軟弱な国土でできるのか。
核兵器の原料となる プルトニウムもあり半減期2億4千年である。
それなら全国にばら蒔いてしまう事例をつくりたいのか?
国民の命と健康、 安全・安心を第一に考えるのが当たり前と思うのだがどうでしょうか?
世界中見ても日本ほど国民を犠牲にして安全安心を度外視する国はないだろう。
オリンピックのために、何でもありか
あきれた安倍首相の施政方針演説
1 月 20 日の安倍総理の施政方針演説にはあきれた。
聖火が走り出すスタート地点は福島の J ヴィレッジ(広野町と楢葉町)だと胸を張った。
J ヴィレッジは今「我が国最大のサッカーの聖地に生まれ変わり、子どもたちの笑顔であふれている」そうだ。
昨年 4 月に公式試合が 1 回あったことと 今年 4 月に「ももクロ」コンサートとかいう話は耳にしたが「聖地」になったり「子供の笑顔であふれている」という話は地元では聞いたことがない。
いずれにせよ周辺に居住してる者にはほとんど関係ない事だ。
無理な避難解除と帰還奨励だから子供たちは帰れない。
楢葉町は避難解除されてから やっと3年、町には二つの小学校と一つの中学があったが、今は3校が小中合体してやっと少数の学級にして成り立っている。
演説でもっとあきれたのは、安倍首相が聖火リレーに関連して「本年 3 月 JR 常磐線が全線開通。これに合わせ双葉町、大熊町、 富岡町の帰還困難区域における避難指示の一部解除に向け準備を進めます」と胸を張ったことだ。
J.ヴィレッジから車で数分の常磐自動車道を少し北上すると単車は走行禁止だ。
並行する国道6号は十数キロ先から車外にでられないどころか車の窓も開けられない。
そこで常磐線を走らせたり聖 火リレーをしようというのが無理なのだ。
「アンダーコントロール」はどうした?
ところがベッドから人間の足がはみ出し たら、足の方を切り落とせといわんばかりに、帰還困難区域だった双葉、大熊、富岡 の一部の避難解除し常磐線を全線開通するという。
1 月 17 日に安倍総理が出席して政府の原子力災害対策本部がひらかれ、そこで 3 月 に双葉、大熊、富岡の一部と、帰還困難区域の常磐線の駅、双葉、大野、夜の森と周辺道路も含め避難指示を解除すると決めた
そうだ。その席でも安倍総理は 3 月 26 日に 出発する五輪聖火リレーで「浜通り地域の 利便性が向上することから、多くの方々に 訪れてもらいたい」と述べた。
そしたら1月21日に、こんどは福島県が、 3 月に一部避難解除されるのだから双葉町を聖火リレールートに組み込むようオリン ピック東京大会組織委員会に要請すると決めた。
これで避難指示が出された 11 市町村 すべてが聖火リレーコースになるらしい。
国も県も一部町長も一体となった出来レースだ。
安倍首相は 2013 年にオリンピック招致演説で「汚染水はアンダーコントロール」 と大見得切った。
それを恥ずかしげもなく 政府は海洋放出を検討している。
そして今度はオリンピックを利用してもっと悪質な 事故被害の隠ぺいをするのだ。
心配はオリンピック後
普段は人気のない地域にせめて聖火リ レーくらいにぎやかにという声もあるが、 危険なコースを大会組織委員会は認めるの だろうか。
一部だけ除染しても台風が来ればだいなしになる。
せめて「年1ミリ Sv」基準を大きく超えるコースはランナーに防護服を着用させるべきだ。
遠方から大勢の観客を動員してはいけない。
子どもや若い女性を沿道にならべて「復興」の人柱の様にあつかうな。
政府は「年1ミリ Sv」以下という基準を「20 ミリSv」以下にした。
今回の措置でこの基準すら事実上守られなくなるのでは。
オリン ピック後は続々と避難解除がされ、なお 5 万人以上の避難者へは帰還の強制とさまざ まな補助が打ち切られ、世間の冷たいまなざしがあびせられ、家族の分断が一層すす むことが一番心配だ。
「復興五輪」の掛け声の中で何が進んで いるのか、みつめてほしい。