原発事故被害者「相双の会」会報68号が届きましたので、転載します。
皆様、新年明けましておめでとうございます。
昨年は、原発事故の被害者にとって「復興」の掛け声とはうらはらに、ほんとに辛い年となってしまったと思います。
3月に国や県は区域外避難者の住宅支援を打ち切り、まだ県内では不安を残しながら線量の高い地区への帰還が始まりました。
国政も過去に例がないほど国民を愚弄しまくり、モリカケ疑惑に対し、首相をはじめ大臣や担当官らが不誠実な国会答弁を繰り返した結果支持率低下し、なおも真相究明を求める国民を欺くため?北朝鮮を利用して突然の解散総選挙 ! 結果は…
散々な年となってしまい、これではとても年を越せないし、口が裂けても「新年おめでとう」と言えないとため息…
ところが、ところがです!! 12月に入っ た途端、まるでそれまでのモヤモヤを吹き飛ばすかのような嬉しい出来事が次々と舞い込んできたのではないですか!!
まずは9日ノーベル平和賞を受賞したICAN(核兵器廃絶キャンペーン)のサーロー 節子さんの受賞演説
「がれきの中、光に向かって進み続けた、そして生き残った。今、 私たちにとって核禁止条約が光りだ」
被爆国でありながら条約に調印しない政府に対するご意見番のような演説でした。
続いて 広島高裁の判決、伊方原子力発電所3号機について、広島高等裁判所は「熊本県の阿蘇山で、巨大噴火が起きて原発に影響が出る可能性」を認め伊方原発3号機を止める決定を下しました!
高裁としては初めての快挙です。
(10月の福島地裁「生業を返せ」 裁判でも国の責任、東電の過失を認め勝訴、良かったです)
そして17日フジテレビ「THE MANZAI2017」に登場したウーマンラッシュアワーの政治風刺漫才。
まさに圧巻の5分30秒でした。ご覧になっていない方のためにちょいと紹介しますと、漫才がはじまって早々 に取り上げたのがなんと原発ネタ。
まず、村本は「福井県出身なんですよ」「よかったらきょうは福井県の場所だけでも覚えて帰って下さい。
いいですか?北朝鮮の向かい側 !」で笑いをとると相方の中川パラダイスと掛け合いをはじめます。
村本「福井県の大飯町、知っていますか?大飯原発がある大飯町です」
中川「あー、ニュースであるよね」
村本「原発の町、大飯町です。大飯町の隣は高浜町・高浜原発。
その隣りは美浜町、美浜原発。
その隣は敦賀のもんじゅ。小さい地域に原発が4基あるんです!!
しかし、大飯町には夜の7時以降にやっている店がないんです!
夜の7時になったら町が真っ暗になるんです!
これだけ言わせてください!
電気はどこへゆく~!!!!」。
いまだテレビではタブーの原発ネタで笑いをとり、沖縄、アメリカ追随の政府と次々と、全国民が胸がすくような怒りと笑いのすばらしい漫才が誕生。
社会派講談師の私にとっても嬉しい限りです。
今春は2月に吉田千亜さんの「ルポ母子避難」を、4月に「福島の祈り」第二弾を都内で発表します。
今年も呆れ果てても諦めないで参りましょう。
手塩にかけた養鶏も水の泡に
Kさん(山木屋)
私と家内は昨年8月に山木屋の自宅に戻り、息子と娘は今年4月に戻りました。
避難先の借上げ住宅は1階に8畳が1間と6畳が1間、2階に4畳半が4間あったが前の住人の荷物が置かれていて 2階2間は使用できなかった。
1階にも前の住人のタンスや仏壇が置かれていた。
2階の2間は息子と娘が使い、1階の2間の狭い空間で私と家内が生活していた。
山木屋の自宅は1 階は台所や風呂、トイレのほかに4部屋あり(8畳が2間、10畳・6畳がそれぞれ1 間ずつ)、2階は8畳と10畳が1間ずつありました。
戻ったのは家内がパーキンソン病になったからです。
借り上げ住宅では階段や段差があり家の中を移動するだけで大変でした。
山木屋の自宅はバリアフリーです。
外部被曝はあきらめたが内部被曝は不安
業者が除染していたが放射線が不安で、 戻る前にカーテンを取り換え、畳の表替え、 屋根や壁を高圧ポンプで水洗しました。
線量は下がったが放射線への不安がなくなっ たわけではありません。
内部被ばくが心配で、自分で作った野菜や山菜やキノコなど 食べ物の線量を測っています。
自宅の線量はあまり測らないようにしている。
自宅の屋内は0.1μSv、自宅玄関付近は0.15μSv、 自宅裏は 0.3μ Sv(毎時 0.23μ Svで、年間1m Svを超える)。
計測しても変わらないし外部被ばくに対する不安は諦めました。
子供たちは、パーキンソン病の家内を一緒に看病したいという気持ちがあるのだと思います。
養鶏再開できず
昭和43年からブロイラー飼育を始め、その後10年くらいかけて規模を拡大して、 1 回で5万羽を生産するようになった(年 4回)。
養鶏を始めたのは、農地が少なく、タバコや米では生活できなかったからです。
暑すぎても寒すぎてもダメなので夕方の外気から翌朝までの気温の低下を予測して温度調節をしていました。
毎朝5時頃に起きて、見回りや温度管理、水やエサの管理をし夜遅くまで温度調節をしていました。
事故前に手術で一時休業するまで40年間続けてきた。
年間の売上げは多い時で1億円を超えていた。
平成23年4月に再開する予定でひな鳥を入荷する段取りをつけていた矢先に原発事故により再開できなくなった。残念でなりません。
補償打ち切りが不安
養鶏も再開出来ない。
水を大量に使うが放射性物質に汚染されている。農機具も施設もない。
再開するには莫大な資金が必要になるが用意できない。
東電からの損害補償は1人あたり月10万円だが、来年3月で打ち切られる予定。
私と家内の2人で補償は20万円。
年金は2人で15万円くらい。
補償がなくなり年金だけになる。
一人になると年金が半分になる。
とても生活できない。
若者や将来農業を担う人が戻ってきていない。
農地だった場所に除染のフレコンバッグが大量に置かれている。
宅地や農地の除染作業が行われたが、山林は一部だけ。
山林に降り注いだ放射性物質が川へ流出し農作物に蓄積される。
だから農地の草刈りや耕うんを行っているが人が戻っても再開できない。
国や県から補助金が出るが使いにくい(8年間継続しないと返納など)。
TPP や種子法の改正、作付け制限の撤廃など多数の障害がある。
多くの方が再開めざし頑張っているが現実的には難しい。
東電の無責任な態度が原発事故を招いた。
この裁判で責任を取ってもらいたい。
相双の会会長 國分富夫
旧年中は大変お世話様になりました。
3月22日に判決となります。
これまで原告団一丸となり原発事故の弊害を訴えてきました。
原発建設当初から人類を滅ぼすような原発は建設すべきでないと何度も訴えてきました。
それでも安全の一点張りで稼働させてきました。
その結果、未曾有の原発事故を起こしてしまったのです。
裁判で公正な判決が出るのは当然と国民の殆どは思うでしょう。
次回の会報で判決日の取組み等をご報告いたしますが、 事前集会と報告集会を開催いたしますので多くのご参加をお願いします。
17年12月13日広島高裁
伊方原発運転差止広島裁判弁護団声明要旨
1 広島高裁は、伊方原発3号機の運転差止を命ずる仮処分を求める住民らの申立てに対し、平成30年9月30日までの期限をつけて運転を差し止める旨の決定を出した。
2 高等裁判所として現実に原発の運転禁止を命ずるのは、史上初であり、また、被爆地ヒロシマの裁判所でこれ以上放射線に苦しむ人々を増やさない決定がなされた意義は大きい。これによって四国電力は、伊方原発3号機について定期検査に伴う運転停止を終えた後も(送電開始予定日は 2018年1月22日)、運転を再開することはできなくなった。
3 内容は、原発の危険性について正しく認定していない点も見られる。傍論とは言いな がら、地震動に対する原発の安全性については、地震科学の不確実性を見誤って事業者の楽観的な主張を踏襲し、地震本部の策定したレシピを絶対視している点で、福島 第一原発事故の教訓を活かしきれておらず、再び深刻な事態が生じかねない内容となっている。ただし、これらは傍論であり、判例的価値は有しないと考える。
4 平成30年9月30日 までの期限付の差止めとしている点でも不合理である。現在証拠調べ等の審理の見通しは立っていず、被告側は反論すら出していない。差止の理由は,火山事象に対して本件原発が安全性を有していないという点であり,火山ガイド の抜本的な見直しや保守的な対策が講じられない限り、期限を経過したとしても安全 でないという事実は変わらない。9月30日が迫った段階で本訴が終了していない場合、我々は、改めて本原発差止仮処分の申請をする予定である。
5 略
6 本決定が本原発の運転を差し止めたという事実を高く評価する。また、火山事象に対 する問題点は、全国の原発においても同様に当てはまる問題であるから、他の原発においてもこの点を追求していく。