5月30日(月)原発事故被害者「相双の会」会報49号が届きましたので、転載します。
被害者住民をどこまでおいつめるのか
安倍政権は、福島原発事故の避難地域の解除を、2014年4月から次々におこなってきました。
除染も不十分なままに「避難指示」を解除すれば、それは原発被害の深刻さを覆い隠し、「除染」をしない口実をつくり、帰還住民を被ばくにさらすことになります。
あわせて「帰還困難区域」とされた地域以外から非難している 10万人近い住民への「精神的慰謝料」は 18年3月で一律打切りが決定。
住宅補償(借り上げ)打ち切りも決めようとしています(自主避難者の借上げ住宅補償は 17年 3月で打切り)。
こうして退路を断って住民を「帰還」に追い込もうとする政策は、本当に冷酷です。
そこまでして原発事故を「なかったこと」にしてしまおうというのでしょうか。
オリンピックを前に、事故の生き証人を消そうというのでしょうか。
除染への疑問相次ぐ
そういう中で、避難指示解除対象者数は最大の南相馬市(避難者 11,700人)で 7月1日 めどに「指示解除」との提案が、政府の原子力災害現地対策本部からなされました。
政府は4月に「解除」しようとしたのですが、反発されて中止していました。
しかしこんどは 強行するつもりのようです。
5月14日、15日、21日、22日に、南相馬市で解除案の住民説明会が開かれました。
政府の現地対策本部の示した理由は、「9割の宅地で除染を終え、年間被ばく量は20m Sv以下になったから解除する」ということだけでした。
大勢の住民から「宅地のすぐ周りは線量が高いところがたくさんある」等の意見、 疑問や不安が山の様に出されました。
しかし 政府側担当者は「高いところは追加除染する」というだけなので、住民は「それなら追加除染の必要なくなってから解除しろ」と反発、 紛糾しました。
レントゲン室で暮らせるか
―20m Svの線量基準はおかしい
だいたい「年間被ばく量20m Sv」以下なら住めるという基準がとんでもない放射線量である事を認識していないのでしょうか。
原発を擁護するには国民の健康などどうでも いいと思っているのでしょうか。
法律では被ばくの上限は年間1m Svです。
20という数字は国際放射線防護委員会が、原発事故から短期間は「1~20m Sv」やむなしとして示した数字です。
いわば「緊急事態」だけの緊急避難措置です。
「緊急事態」が5年も続いていいのでしょうか。
しかも国際基準の一番高い数値のままで本当に「安全」と言うなら現行法をなぜ改訂しないのでしょうか。
病院のレントゲン室は年間被ばく5m Sv以下ですが「放射線管理区域」で立ち入り禁止です。
20m Sv以下なら生活できる等とどうして言えるでしょう。
子供や若者は帰還できないのも、無理ないのです。
強行解除はやめてほしい
説明会は毎回紛糾しているにもかかわらず、政府側は「解除は既定方針」としての説明ですからまともに答弁しません。
残念ながら櫻井市長は「説明会はもうやらない」として、政府と解除時期の協議に入る姿勢を示しています。
21日の説明会では相双の会会長の國分富夫が別記のような意見を述べました。
相双の会としても、引き続き住民の声を聞きいれるよう働きかけていきます。
小高はすべてを奪われた
原発建設には多くの反対者があったにも関わらず権力と金力で安全神話を作り上げ国民を馬鹿にして進めてきた結果の事故であります。
原発事故により小高はめちゃめちゃされてしまいました。
何百年と先人たちが血のにじむような思いで造り上げてきた小高を一握りの電力の利益のために全てを奪われてしまいました。
家族、地域コミュニティが壊され二度と戻らない、ズタズタにされてしまいました。
これまで原発関連死は 2016年3月で 1368人(東京新聞)南相馬市だけで原発関連死は 485人 と聞きます。
除染では簡単には下がらない
長年放射能を研究してきた学者でもまだまだ分からない事が多くあると言われています。
チエルノブイリ事故から 30年が過ぎた今になって元住民に障害がでています。
広島・長崎に原爆投下されて70年も過ぎていますが、それでも障害で苦しんでいる人が多くいるのです。
福島原発事故から5年2ヶ月です。
それで「安全です、健康に障害はありません」と言う未熟な学者先生がいるようですが、まったく無責任としか言いようがありません。
除染をしたから放射線量が下がったと言うが、セシウム134は半減期2年ですから下がるのは当たり前です。
問題はセシウム 137だと思います。
半減期 30年 100年過ぎても10分の1だと言われていますから大変な事です。
低線量被ばくでわからないことはたくさんある
空間線量年20mSv以下なら安全といいますが、20mSvは暫定基準として決めたのではないのか。
法律の基準の1mSvであったら浜通りはもちろん中通り、栃木、茨城も避難しなければなりません。
そのための緊急対策と して20mSvとしただけのことでしょう。
現在は空間線量よりも土壌が問題だろうと思われます。
㎡4万Bq以上の所は放射線管理区域となっています。
平均 10万Bqから 100万Bq以上であっても健康に問題ないと言うのですか。
自然界の放射線量であろうが被ばくするよりはしないほうが良いにきまっています。
原発事故後5年が過ぎた現在、線量はいくら少ないところでも自然界の 3倍~100倍以上となっているのが現実です。
低線量被ばくについてまだまだ分からない事が多くあると聞きます。
それだけ 20年 30年後が心配されます。
特に子どもたちの健康については真剣に考えるべきと思います。
だれが責任取るのですか
その時、誰が責任を取るのですか、
ひな壇にいる皆さんが責任を取るのですか、
役職やめたから関係ないというのですか、
国が言っていることを代弁しているのだから関係ないと言うのですか、
今日のこの説明会で出た発言内容を含めて後生に残していく事があなた方の責任ではないでしょうか、
私たちはこれまで何度となく嘘をつかれ危険にさらされて来ました。
そして最後に世界に例のない大事故が起きてしまい、
その犠牲になったのが地域住民ではないですか、
そして、これから放射能とのたたかいがいつ終わるともなく続くのです。
その間の保証を続けるのが加害者である 、東電であります。
また国策として進めてきた国でもあります。
避難者訴訟―現地検証、裁判進行などで裁判所が前向きに
弁護団は裁判所に、来年3月までの結審、そのための集中証拠調べ、現地検証と専門家証人の採用ということを強く求めてきました。
進行協議で、裁判所から示された素案によると、原告本人尋問の最終実施は 2017年 6月。
今年の7月と9月に現地検証を行う。
8月以降、2カ月おきに同時並行で 10名の原告本人尋問を実施する。
専門家証人の採用を検討する、などの内容でした。
さらに裁判所は、「このスケジュールが早まるのは構わないが、遅くならないようにしたい。」と述べました。
7月の現地検証は7月22日と仮に日程が入りました。
この裁判所の対応は、劇的な変化だという感想を持っています。
杉浦・前裁判長は、現地検証にも専門家証人の採用にも一貫して後ろ向きな対応でした。
いつまでに裁判を終えるということについてのスケジューリングにも拒否的な対応でした。
これに比べれば島村裁判長体制は相当前向きな対応です。