原発被害者相双の会 会報110号が届きましたので、転載いたします。
私と伊藤さんとの出会い
福島第一原発から飯舘村は直線で約 30~45km、人口 6500 人の酪農の盛んな村でありました。
「日本で一番美しい村連合」に加盟が許された村で、人情深く全人口が親類縁者のようなものでした。
2011 年 3 月 11 日東日本大震災そして 3月 12 日に福島第一原発 1 号機、14 日には 3号機、15 日には 4 号機で次々と爆発が起き、建屋の上部が崩壊し大量の放射性物質が放出されました。
飯舘村民は原発が爆発しても村には影響ないだろうと思っているのが大方の見かたでありましたが、風の流れが飯舘村へ向かい、その時最悪な事に雪が舞 い降りて村全体が汚染されました。
本来は即避難となるべきですが、意味が 分かりませんが一ヶ月も経ってようやく「計画的避難区域」に指定され、「全村避難」となりました。
私は伊藤延由さんと出会って 10 年、原発事故からでありますが、大変お世話様になり今日に至っております。
伊藤さんは 2010 年に「農業をやる」と新潟から移住して一年間だけ農業を経験しました。
農業二年目の準備の最中に原発事故に遭遇しました。
そして今、飯舘村や国が、「今日まで被ばくのリスクは一切語らないのは、本当に腹立たしい限りです」と危惧しています。
伊藤さんは現在も線量が高いのにも関わらず、山菜、キノコなどあらゆる物を測定し記録を残しています。
そこで今回は測定記録の一部を紹介します。(國分富夫)
飯舘村伊藤延由
原発事故を契機に飯舘村を拠点に放射能汚染の実態を調査してきました。
2020年には「東京新聞」と協力して、じゃが芋の栽培実験を行いました。
結果は表1の通りです。
栽培実験には、以下の五つの濃度の土壌を用いました。
①村内農地の土壌(放射能濃度約 3,218 ㏃/kg)。
②購入培養土に村内産の薪の焼却灰を添加し、その添加量により土壌の放射能濃度を6,879 ㏃/kg、3,528 ㏃/kg、1,953 ㏃/kg に調整したもの。
③村内産腐葉土(放射能濃度 40,307 ㏃/kg)の土壌。
結論は、汚染木の薪の焼却灰、腐葉土は非常に危険ということです。
村内の農地の土壌を使った栽培では移行率 0.1%と低い、これは、セシウムは土の粒子に固着し根から吸上げられることはほとんどないからです。
一方、腐葉土は土の様に見えますが、植物栄養学・土壌学の専門家である森敏東大名誉教授の話によれば、 落葉が分解される途中のものであって、根は容易にセシウムを吸い上げてしまうからです。
国は広大な山林の大部分をはじめから除染の対象とはしませんでした。
飯舘村の緑の葉っぱには全てにセシウムが入っています。
落葉した葉っぱは腐りセシウムを濃縮し翌年根から吸上げます。
これを10 年続けた結果、腐葉土が最悪の汚染源と化しているのです。
薪ストーブや風呂ガマの灰は非常に有益な肥料で、土壌改良材でした。
だから必ず畑に還元しました。
腐葉土も畑にすき込み土作りをしました。
飯舘村の野菜が美味しいと言われた理由は夜と昼の寒暖差と堆肥、腐葉土を使った土作りによるものだったのです。
薪の焼却灰も腐葉土も自然の恵みでした。
しかし今は最悪の汚染源になってしまいました。
村内の薪は、薪ストーブや風呂で焼却すると約 100 倍に濃縮してしまうのです。
県内の樹木の汚染は続いています。
杉の樹皮の汚染を測っていますが、飯舘村内8件の平均値は約4,000 ㏃/kg、浪江町の6件のそれは約 27,000 ㏃/kg、2020 年12月に測った福島市の高湯温泉近くの杉の樹皮は
171 ㏃/kg でした。
県は風評被害の克服と叫ぶばかりでなく、腐葉土を畑にすき込むな、焼却灰は畑に還元するなと叫ぶべきです。
南相馬市小高区の白髭幸雄さんは今でも渓流釣りをしています。
釣っても食べられるわけではありません。
「私は線量が高い汚染地域で釣りをするのは、イワナ、ヤマメなど好きだった渓流魚たちが、人間のエゴによって汚染されたことに対し、周辺の環境を含めて調べたいと思ったからだ」と話しています。
渓流釣りとなると水は綺麗で緑豊かな環境を想像します。
そこが放射能汚染されたとなれば心苦しくなるのは当然の事です。
私も渓流ともいわれる環境の所で生まれ育ちましたから、子供の頃は夏休みともなれば遊び場は川、ヤス一本でヤマメやウナギが目当てでした。
特に渓流のウナギは泥臭みがなく美味しかったです。
白髭さんから昨年のイワナ測定記録と写真を提供して頂きましたので掲載いたします。
(國分富夫)
放射性物質トリチウムなど核物質を含む汚染水と、さらには汚染土壌があまりにも大量のため、国は処分・貯蔵に困り果てています。
そして放射性物質を海洋放出、汚染土壌は全国の公共事業に利用すると実証実験を始めました。
「実証実験」など偽装も良いところです。
実証実験というならば、50 年以上おこない結果を出すべきです。
また、放射性物質(トリチウム)の海洋放出は原発を稼働すれば常時たれ流してきたと、当たり前のように安全を強調しています。
しかし、大事故を起こし未だにその処理が全くできていない福島第 1 原発の汚染水は訳が違う。
この汚染水は、地下水が崩壊した状態の炉心に流入するのを止められず、遠隔操作のロボットですら近寄るのが困難で人は即死する高線量のデブリに触れて垂れ流しになったものです。
ですから ALPS(放射性物質の除去装置)でトリチウム以外の放射性物質を完全には取り除くことは不可能であり、ストロンチウム 90(半減期 28.8 年)やセシウム 137(同 30.0 年)がかなり出ています。
半減期 1570 万年のヨウ素 129 や、同 21 万1千年のテクネチウム 99 等は常時ALPSを潜り抜けていると多くの科学者が指摘しています。
これらは濃度としてはさほど高くなくても、100 万トンに含まれる絶対量としては多量となります。
しかも炉心への地下水流入を止める技術開発を放棄し、安易に海洋放出する方式なので、今溜まっている水はホンの一部で今後何十年も大量の汚染水を垂れ流すことになります。
漁民が絶対反対の声をあげるのは当然です。
安全であると実証するなら少なくも50年単位の安全となる納得のできる実証実験を行うべきです。
私たちは当たり前の事を当たり前に求めています。
トイレ無き原発を国民の血の滲むような税金を使い、猛反対があるにも関わらず稼働させ事故を超した責任は国と電力会社にあり、後世に対し将来の健康不安が付きまとうことから少なくも100 年賠償と責任を負うことは当然の事です。
是非ご投稿をいただき「声」として会報に載せたいと考えています。
匿名でもけっこうです。
◇電話 090(2364)3613
◇メール(國分)
kokubunpisu@gmail.com