2月1日(月)原発事故被害者「相双の会」会報45号が届きましたので、転載します。
またまた無責任な!?
―「除染」方針と「汚染土壌の再利用」
井上信治環境副大臣、「森林除染せず」
12月21日環境省は住宅など生活圏から20m以内の日常的に人の出入りがある場所を除き、大半の森林では原則として除染しない方針を示し、環境回復検討会で了承されました。
井上信治環境副大臣はこう述べています。
「広い森林を全面的に除染するのは物理的に困難だ。
落ち葉など堆積物を取り除くことによる土砂流出など悪影響もある。
県土の7割を占める森林だが、雨や風の影響で放射性物質が森林の外に流出する量は少なく、生活圏の空間線量への明確な影響は確認されていない」。と言う。
しかし、除染の困難さはかねてから住民が訴えてきました。
専門家も莫大な費用をかけて「除染」する効果には疑問を呈してきました。
今更居直るのでしょうか。
福島県の森林 面積は全国4位の約97万ヘクタールである。
放射性物質が広範囲に拡散した影響で住民の環境や林業再生に致命的な影響を与えているのです。
国民の命と健康どうでも良いと思っているのか
環境省は以下のような「森林除染方針のポイント」を示しました。
●土壌流出や樹木への悪影響が懸念されるため、生活圏から20mの範囲と日常的に人の出入りがある場所を除く森林は原則として除染しない。
●生活圏に影響がある森林からのセシウムの飛散は確認されていない。
●土壌流出が懸念される急斜面などには木製棚などを設置。
●林業再生へ作業員の被ばく低減や間伐など森林整備を一体的に実施。
こんな事が許されることでしょうか
まるで地域住民は放射能被害の実験台ではないか、先人が血のにじむような思いをしながら鍬一つで耕し後に次いで来た結果が現在の山林です。
それが東電の金儲けのために全てを奪われてしまった。
それだけではありません。
環境省は土壌の放 射性物質を減らした上で再利用するための安全基準を設定する方針を固めました。
汚染土壌などが発生する見込みの総量は約 2,200 万立方メートル(東京ドーム18個分)です。
この保管場所に困って、「汚染土壌の再利用を最も進めた場合には4万立方メートル(0・8%)まで減らせる」といいはじめました。
平成36年度までの10ヶ年で、放射性物質を減らす技術開発を目指し、仮置き場から中間貯蔵施設へ搬入する前に減容・再利用するというのです。
相当な技術開発がない限り不可能です。
このままでは、日本の国土を放射能まみれにしてしまいます。
低線量だから良いとはなりません。
福島県の人口11万人も減少
国勢調査の速報値が発表された。 10月1日現在で191万3606人、2010年の前回調査に比べ11万5458人(5.7%)減少、
減少幅は過去最大、原因は原発事故に伴う県外避難が最も大きいと見られる。
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12.9 避難者訴訟
第 14 回裁判の報告
弁護士 笹山尚人 鳥飼康二
迎えた第4回の本人尋問
平成27年12月9日に実施された避難者訴 訟第14回期日は、原告本人尋問の第4回でした。
今回は3名の原告でしたが、全員楢葉町からの避難者であるところが特徴です。
楢葉町は2015年9月に避難指示解除となりました。
帰還するかしないかの問題がより切実に問題になります。
そこをどう語るかが一つのポイントでした。
今回法廷に立ったのは、Eさん(担当・ 米倉勉弁護士)、Wさん(担当・高橋力弁護士)、 Nさん(担当・深井剛志弁護士)です。
一人あたりの主尋問60分、トータルで90分ほどの長丁場でした。
主尋問で明らかになったこと
3名の原告は素晴らしい証言をしました。
私の一番の印象は、「事故前の楢葉町って、ものすごく良いところだったんだな。
一度行ってみたかったな。」ということでした。
どなたの証言にも、ふるさと「楢葉町」の素晴らしさを、それぞれに語るものでした。
(1)最初のEさんの尋問では、「家族離散」 が大きなテーマとなりました。
Eさんは、3世代家族で、豊かな老後生活を楽しんでおり、 特にお孫さん(当時4才)とのふれあいは、 かけがえのないものでした。
ところが、原発事故によって、Eさん家族は、いわき(2か所)と東京の3か所で、バラバラに避難生活を送らざるを得なくなりました。
お孫さんと面会したときの別れ際、お孫さんがEさんの腰に抱きついて離れようとしない、Eさんの車に乗り込んで降りようとしない、この切ない情景が語られたとき、傍聴席のみならず裁判官も涙を流していました。
裁判官がこの原発訴訟で涙を流したのは、初めてだと思います。
また、避難生活の苦しさについて、「原発事故で自殺した人の気持ちがわかりました」と語ったとき、Eさんは、当時の辛い心境を思い出したようで、涙を浮かべていました。
(2)2人目のWさんは、農家のご二男ですが、家業を継ぐ。
ふと、楢葉町で子どもたちを育てていた時のことを思い出す。
子どもたちは、気持ちで誰にも負けないやさしさを持った子どもたちに育てることができた。
その子どもたちの子ども(孫)を、子どもたちと同じように海・川に連れていき、そうして情の世界を育てたいと夢に思っていた。
今、それをやりたかった。
楢葉の将来を担う子どもたちに、そんな未来をプレゼントしたかった。
しかしいま、3歳の孫にそれができない。あの狭いアパートの中で、妻とどうしたらいいか、日々悩んでいる。
妻と楢葉に行くたびに、楢葉はいいなあ、楢葉に帰りたいなあ、と語りあう。
私たちはそんなふうに、必死の思いで避難している。
本当は、賠償金とか、そういうことではない。
元の楢葉に戻してもらいたい、それだけなんだ。というお話が、涙なしに聞けませんでした。
奪われたふるさとの重みを、ずっしり感じた証言でした。
(3)3人目のNさんは、40代の4人家族のお母さん
楢葉の人は、自然が好きで、楢葉にこだわ 、りの自宅を建てて、草木にあふれ、子どもたちが思いっきり外遊び出来て、ご主人も楢葉の自然を満喫できる。
前半は、そういう幸せだった日々が、細かい一つ一つのエピソードを積み重ねて明らかになりました。
後半は、避難を余儀なくされて、家族全員が精神のバランスを失っていく様子が語られました。
愛着こもった自宅の荒れ果てた様子に触れ、Nさんは、「無念」と語られました。
何が無念かと問われ、「未来がなくなってしまったことに無念を感じる」、と答えました。
未来がなくなる。原告でなければ語れない、重い言葉だと思いました。
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放射線被ばく問題(2)
道北勤医協旭川北医院院長 医学博士 松崎道幸
答:日本政府は、「100ミリシーベルト以下の低線量被ばくでは、放射線による発がんリスクの増加は、他の要因による発がんの影響によって隠れてしまうほど小さく、 放射線によって発がんリスクが明らかに増加することを証明するのは難しい。
これは、 国際的な合意に基づく科学的知見である」 と首相官邸ホームページで述べています。
ところが、100mSvを大幅に下回る被ばく量でも、明らかにがん(死)が増える事が次々と証明されました。
次のページの研究データは、被ばく量とがん診断の正確度が高い最近の医療被ばくデータに基づいているので、信頼性が高いものです。
10mSvあたりがん(死)が 3~4%なら、 100mSvでは 30~40%増になってしまいます。
この数字は、次に示す政府の主張よりも 一ケタ近く大きながんリスクなのです。
答:政府の論理は、1000mSvの原爆被ばくでがん死率が約50%増えていたから、100mSvなら5%増となるが、喫煙や肥満などの不健康なライススタイルで何十%もがんが増えるのだから、100mSvの被ばくによるがんの危険は無視できる、
しかも、一度に100mSv 被ばくするのではなく、数十年かけて 合計100mSv被ばくした場合は、遺伝子の修復作用が十分に働いて、発がん率が半分以下に減るに違いないから、リスクはさらに小さくなるはずだ、というものです。
でも、先に示したデータを見ると、政府の言う「原爆データ」が、放射線被ばくの影響を一ケタ近く小さく見積もっていることになります。
実は、この「原爆データ」は放射線影響研究所(放影研)がまとめたものなのですが、二つ の大きな欠陥があります。
一つは、1945年に被ばくしたのに、がんについての追跡調査が始まったのは13年後で、1958年の時点で生存していた「病気に強い」被ばく者が対症となった可能性があります。
二つ目は、被ばくゼロの人々でなく、相当被ばくのある人々を基準としてがんのリスクを計算したことです。
この二つの欠陥によって、放射線被ばくの影響が大幅に過小評価されてしまったのです。
答:そうです。被ばく量が10mSvでも、 100mSv近くの被ばくに相当する健康被害がもたらされる恐れがあると考える必要があるわけです。
現在の空間線量が一ケタ近く大きくなったと想定して対策を見直す必要があると思います。
講談師 神田香織さん 南相馬で口演
と き 2月21日午後1時30分開演
場 所 南相馬市ひばり生涯学習センター
◇神田さんはいわき市出身で福島県立いわき女子高卒業後、東京演劇アンサンブル、渡辺プロダクションドラマ部を経て昭和55年神田山陽門下生となり、二ツ目以降、ジャズ講談や一人芝居の要素を取り入れた神田香織独自の講談を次々発表、講談の新境地を切り開いてきました。
◇代表作:中沢啓治の漫画「はだしのゲン」や、スヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチの「チェルノブイリの祈り}