原発事故被害者「相双の会」会報138号が届きましたので転載します。
山菜・キノコ・土壌など測定して原発事故の実 態を暴いて13年、その一部を報告します
国や自治体が発表する値は本当? 飯舘村 伊藤延由さん
原発事故直後の3月15日飯舘村で44.7µSv/h が記録されたとき、飯舘村の長泥曲田地区では 300µSv/hくらいだった。
3月28日に当時京都大助教の今中先生が飯舘村の長泥曲田地区を測定したとき 30µSv/h を測定したが、当初短寿命核種が大量に存在していたためだ。
しかしセシウムなど長寿命核種が複雑に残り、国が除染地区や非除染地区別に公表する線量調査は実態を全く反映していない。
村の生活に特に寄与していた(村民の食費の40%は山菜、キノコなどの自然の恵みだった)山菜・キノコは何時になったら食べられるようになるのか?
13年間にわたり綿密な調査をしてきた飯舘村の伊藤伸由さんから報告をいただいた。
測って分かったこと
●初期降下(事故直後に降りそそいだ放射能)の不均一
同じ農地ですら測らないとわからない。10回ほど耕転(下層の土と表土を掘りかえし入れ替える)しても不均一は改善されず
●2011 年 5 月 4 日の採取土壌にヨウ素 I‐ 134 が見えた。
3月15日時点ではヨウ素 I-131 だけで 30 万 ㏃/㎏と推測される。ヨウ素は甲状腺がんを発症させる核種。
●自然の循環サイクルに組み込まれたこと
腐葉土が最大の汚染源であること。2014年飯舘村の測定でコウタケのワースト№2 は大倉行政区産(村内で一番汚染が低い地域)だった。
1.初期降下(原発事故直後の放射能の降下) の場所ごとの不均衡
これが後々村内の汚染を測るときに、1mずれると全く違う値を示す原因。
No.1、No.2、No.3は連続した水田だが 値が全く異なる。
No.4、No.5、No.6は畑内、10回ほどトラクターで耕したが、ほうれん草、ジャガイモ を植えた土壌は約二倍の違いがある。
2.原発事故がなければ汚染は10~20Bq/kg なのに飯舘村は!
飯舘村は除染済でも 8,847 Bq/kgだ。
No.7は柏崎刈羽原発から約30kmの地点、柏崎刈羽原発は一つの基地で世界最大発電量の原子力発電所だが、汚染は見られない。
3.花の測定結果
降下した核物質(ここではセシウム134、137)は自然の循環サイクルに組み込まれた。
植物はセシウムを栄養素?(カリウム)と認識し吸収している。
汚染地域の自生の植物には全てにセシウムが入っている。
2019年時点では、つつじの花にセシウムが入っていた、一つの花に0.025Bq が入っていた。
「飯舘村の緑色はセシウムの色」と発言している。
4.茸の測定結果
茸については年ごとに違いが大きい、キノコの汚染度合が培地(土壌)濃度に比例しない。
初期降下の不均衡と自然の循環サイクルに組み込まれ腐葉土層を形成したせいと思われる。
キノコ自身が濃縮しているケースもあり、培地よりもキノコが高い例が見受けられる。
5.塩出し汁を流していいものか?
塩漬けワラビを熱湯に浸け重曹や灰を添加すると実験では、99%以上の脱セシウム率、99.99% もある。
細胞内のセシウムが水に流れ出る(ナトリウムのイオン交換と同じ)。
しかし、抜けたセシウムは川を下り海に流れ込む。
汚染水の海洋放出に反対している者として、排水の基準値はクリアしているが、流して良いものか悩んでいます。
2022年から 2023年にかけて、帰還困難区域の中で特定復興再生拠点に指定されていた地域が除染「完了」ということで、次々と避難指示解除されました。
私たちはその後を追う形で測定活動を行いました。
□双葉郡富岡町 2023年 4月1日避難指示解除
富岡町では、夜の森地区及び大菅地区の一部が避難指示解除になりました。
夜ノ森の名所・桜並 木のあるあたりということになります。
測定は 2023年 5月と 6月、49 ポイントで測定しています。
□相馬郡飯舘村 2023年5月1日避難指示解除
飯舘村では帰還困難区域として残っていた 長泥行政区の避難指示が解除されましたが、 他の町村と異なり特定復興再生拠点区域以外の部分も含めて解除になっています。
復興再生拠点以外の部分は除染せずに解除しているので立ち入りは可能ですが、居住制限が掛かっています。
2020年10月に退任した菅野典雄・前村長が、復興再生拠点以外の部分も含めて長泥行政区の一括解除を国に強く要望したという経緯があります。
測定は 2023年7月に行い、58ポイントでした。
土壌汚染密度の中央値は、912,000 Bq/m²でし た。
土壌汚染密度の中央値は、1,055,000 Bq/m² でした。
「ふくいち周辺環境放射線モニタリングプ ロジェクト」
共同代表・中村順記