原発事故被害者「相双の会」会報83号が届きましたので、転載します。

ふる里へ帰りたいけど帰れない

原発事故から8年が過ぎたそれでも 福島の避難者は3万人を遥かに超えている。
それは「帰りたいが帰れない」 など複雑な事情があるからだ。

「帰還が少なければ復興につながらない」からと、あらゆる手段を使い、 公共施設建設にこれまで考えられないような予算を投入して呼び寄せようとしている。
国も各自治体も何故帰還者が少ないのかを根本から考え取り組まない限り解決策はない。

この8年間で明確になったのは、いくら除染をしても放射性物質は拭えきれないと言う事である。
避難解除した地域は「除染は終了しましたから安全です」と言うが、その後、何年過ぎても除染が続いている。
いくら立派な公共施設をつくっても安心して子育てできる環境でなければならない。
帰還している方もいるが、ほとんど高齢者だ。
帰還した方に「息子さんは帰ってこないですか」と聴くと「帰ってこいなどと言えるわけない」と、元気もなく話す。

まだまだ終わらない原発事故

原発事故は終わっていない。
汚染水は どんどん増え続けるために国の対策としては海洋に流す事だけを考えている。
海洋は私たちが生きていくための貴重な資源なのである。
廃炉に 40年とか 45年とかいっている。
しかし1〜3号機の炉心融解はその後もすすみ、最終的に核燃料のほとんどが融解し、圧力容器(原子炉)の外に漏出する「メルトスルー(炉心貫通)」に至っている。
溶融固化核燃料デブリを取り出せるのか、取り出すために労働者が入り込めば即死するだろうと言われている。
炉外へ放出されれば原発事故があった水素爆発どころではなく大量の放射性物質が拡散され汚染されるのではないかと思われる。
このような状況で何が安全で大丈夫なのでしょうか。

原発関連死は 3000人超に

震災関連死が岩手 467人宮城 928人 福島 2,250人で福島が断トツなのである。
明らかに震災関連死と言うよりも原発関連死なのである。
実際は 3,000人は超えているのではないかと思われる。
しかも、今後も増え続けると予想される。

現政権は国民を人間あつかいしない。
税金は搾るだけ搾り生かさず殺さずであるが、命と健康などひとかけらも考えていない事が原発事故で明らかになった。

大企業は労働者を過労死するほど酷使し、低賃金で人間らしい生活も出来ないほど搾取して温々となにも不自由なく生きているのである。
原発事故で全てを奪い何千人も死亡しても罪にもならず、東電も国も裁判で無罪を主張している事からすれば加害者意識がない。

地域住民を実験台にして
放射能を全国にばらまく!

除染土壌の再利用の問題がこれまではひた隠しにしてきたが、公共事業に再利用しようとして実証事業を提案してきた。
(南相馬市小高区内常磐高速道四車線化の盛り土に利用)小高区西部地区行政区長説明会が3月7日に開催されたが傍聴者、マスコミを一切入れず行われた。
説明会参加者は全員が反対を主張した。
反対運動も起きている。
小高区の地域住民を実験台にして、安全であるから公共事業に使う実証なのである。

現政権(自公)がこのまま続くとなれば原発推進も続く、どこかで原発事故がまた起きても国や電力会社は驚きもしないだろう。
何故なら汚染物は全国の公共事業に使いバラまけば良いことになる。
そんなことを許してはならない。
世界一汚れたきたない日本ではない、住みやすい綺麗な日本を取り戻さなければならない。
それが今に生きる私たちの役目であろうと思います。

避難と帰村の葛藤、
コミュニティの再建へ向けて

5名の方々から現状と取り組みについて報告された。
原発事故後の生活について激変してしまった。
再建しようにも手立てがないほどであること、コミュニティは村民の生活、村づくりそのものであったことが述べられた。

村民の高齢化

「新たなコミュニティ」と言っても残された高齢者の将来はどうなるのか、以前の美しい村は誰が維持するのか、家族の離散、若者の離村となり移住者優先施策が飯舘村の既存文化の維持をどうするのか、等々考えることが出来るのだろうか?飯舘村の歴史や文化は先人がいて教えを得て出来るものである。
農業は村民の高齢化で維持出来るか、農産物の安全・安心を考えたとき保障はされるのか、放射能への不安などを考えたとき、担い手の高齢化とどう向き合うのか難しい問題だ。

息子に帰ってこいとは言えない

村を見捨てる分けにはいかない。
先祖からの農地をも捨てる事は出来ないといろいろ考えた末、除染農地で蕎麦を栽培した「前田明神そば生産組合」 を結成した。
そば乾燥調製施設(国からの無償リース)もつくった。
これも 自分の代で終わるかも知れない。
なぜなら若い人は 1 人もいない。
戻ってこない。
自分の息子に帰ってこいとは言えない。
帰って来るべきでないと思っ ています。

飯舘村を放射能測定して8年、

除染費用が 3,100 億円もかけてきた。
除染の効果はあるがしかし里山含めて除染したわけではなく、除染には限界がある。
モニタリングポスト(大気中の放射線量を継続的に測定する据え置き型の装置)の役割を果たしているのか、モニタリングポストの線量と周辺の線量の違いは大きい特に周辺が山となれば違いが大きい。
このように汚染されている中で避難解除するそのものがおかしい。
昨年 4 月時点のフキノトウと土壌の調査結果は以下のようなものだった。

フクシマ事故と東京オリンピック(3)
元京都大学原子炉実験所助教 小出裕章

1年間に20ミリシーベルトという被曝量は、かつての私がそうであった 「放射線業務従事者」に対して初めて 許した被曝の限度である。
それを被曝 からは何の利益も受けない人々に許すこと自体許しがたい。
その上、赤ん坊や子どもは被曝に敏感であり、彼らには日本の原子力の暴走、フクシマ事故になんの責任もない。
そんな彼らにまで、放射線業務従事者の基準を当てはめるなど、決してしてはならないことである。
しかし、日本の国はいま、「原子力緊急事態宣言」下にあるから、仕方がないと言う。
緊急事態が丸1日、 丸1週間、1月、いや場合によっては1年続いてしまったということであれば、まだ理解できないわけではない。
しかし実際には、事故後7年半たっても「原子力緊急事態宣言」は解除されていない。
国は積極的にフクシマ事故を忘れさせてしまおうとし、マスコミも口をつぐんでいて、「原子力緊急事態宣言」が今なお解除できず、本来の法令が反故にされたままであることを多くの国民は忘れさせられてしまっている。
環境を汚染している放射性物質の主犯人はセシウム137であり、その半減期は30年。
100年たってもようやく10分の1にしか減らない。
実はこの日本という国は、これから 00年たっても、「原子力緊急事態宣言」下にあるのである。

オリンピックはいつの時代も国威発揚に利用されてきた。
近年は、箱モノを作っては壊す膨大な浪費社会と、それにより莫大な利益を受ける土建屋を中心とした企業群の食い物にされてきた。
今大切なのは、「原子力緊急事態宣言」を一刻も早く解除できるよう、国 の総力を挙げて働くことである。
フクシマ事故の下で苦しみ続けている人たちの救済こそ、最優先の課題であり、 少なくとも罪のない子どもたちを被曝から守らなければならない。
それにも拘わらず、この国はオリンピックが大切だという。
内部に危機を抱えれば抱えるだけ、権力者は危機から目を逸らせようとする。
そして、フクシマを忘れさせるため、マスコミは今後ますますオリンピック熱を流し、オリンピックに反対する輩は非国民だと言われる時が来るだろう。
先の戦争の時もそうであった。
マスコミは大本営発表のみを流し、ほとんどすべての国民が戦争に協力した。
自分が優秀な日本人だと思っていればいるだけ、戦争に反対する隣人を非国民と断罪して抹殺して いった。
しかし、罪のない人を棄民したままオリンピックが大切だという国なら、私は喜んで非国民になろうと思う。

フクシマ事故は巨大な悲劇を抱えたまま今後 100年の単位で続く。
膨大な被害者を横目で見ながらこの事故の加 害者である東京電力、政府関係者、学者、マスコミ関係者など、誰一人として責任を取っていないし、処罰もされていない。
それを良いことに、彼らは 今は止まっている原子力発電所を再稼働させ、海外にも輸出すると言っている。
原子力緊急事態宣言下の国で開かれる東京オリンピック。
それに参加する国や人々は、もちろん一方では被曝の危険を負うが、一方では、この国の犯罪に加担する役割を果たすことになる。
終わり

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