原発被害者相双の会 会報123号が届きましたので、転載いたします。

福島第一原発の事故における避難者の四つの集団訴訟でも、国には何の賠償責任もないと最高裁は判決した(6月17日)。

今日の自公政権は大資本と一体となって労働者国民を支配し、できるだけ多くの剰余価値を吸い上げ、利潤を蓄積するための機関であることが改めて明らかとなった。
最高裁も階級支配の国家機関である。「三権分立」などといっても、いずれも大企業優先の機関であることが、今判決でも明らかである。

11年前に以前から予想された大津波への対策を怠っていたことばかりではない。

この地震列島に原発を造ること自体が無責任極まりないことであった。
中曽根康弘首相以来の自民党歴代政権の責任は限りなく重い。
通産省(現経済産業省)をはじめ関係省庁幹部の責任も重い。
9電力や三菱や日立や東芝や建設大手等の利潤のためにしてきたことであり、自民党の歴代首相や通産大臣などの責任は極めて重いにもかかわらず、責任を問われることはない。
などと言う事が許されることではない。

国はどんなに危険であろうが、国民が犠牲になろうがお構い無し

今はまた日銀(これも国家機関)の円安・ドル高政策によって、石油や天然ガス等が暴騰していることにかこつけて、原発の再稼働促進に腐心する。

県都(県の中心となる都市)にある中国電力島根原発2号機も再稼働させられる。

とくにひどいのは稼働45年になる関西電力美浜3号機である。
かねて原発の設計年数は30年とされ、定期点検等の停止期間を含めて長くとも40年には廃炉とすべきとされていた。
原子炉圧力容器は新しいうちはかなり低い温度まで粘り気を持っているが、稼働による中性子の照射によって粘り気を失い、脆性遷移温度(ぜいせいせんいおんど)はシフトして、より高い温度でも粘り気を失ってしまう。
つまり破裂(脆性破壊)しやすくなる。
高圧で運転する原子炉を稼働40年を超えて再稼働させるなど断じてあってはならないことである。

美浜3号機は昨年6月に再稼働し、10月にテロ対策のための施設が未完成のため停止したが、今年10月20日に運転再開予定としていたものを、2か月前倒しして8月12日に再稼働すると決定した。

原発にかえて洋上風力中心の自然エネへ

すでに稼働中は関電高浜4号機、大飯3号機、九電川内1号機、四電伊方3号機と4 機もあるうえに、新基準に「適合」とされているものは、関電美浜3号機に高浜 1、 2、3 号機、大飯4号機、九電川内2号機、玄海3、4号機、中国電島根2号機、東電柏崎6、7号機、日本原電東海第二、東北電女川2号機の13機もあり、あわせて17機もある。

国はこれらを速やかに稼働させようと促す。
高騰する石油や天然ガスを節約するためにも、二酸化炭素の排出を減らすためにも、と。

極めつけは風力発電開発に対する妨害である。

全国の送配電網は9電力が完全に独占していて、風力発電事業者による開発はテンポが遅すぎるとはいえ、それでもようやくあちこちに計画、建設されるようになった。
ところがこの風力発電に対し、ミサイルなどを感知する自衛隊のレーダーの邪魔になるからといって、防衛省が風力発電事業者に計画の変更を迫っている。
政府が設定した洋上風力発電の「有望な区域」の一部にさえ設置しないようにという介入が始まっている。

風車の回転は人間に有害な周波数の音波を発生する。
これは人の生活圏から距離をとることで解決できる。
洋上風力であればこの問題の解決は容易である。
野鳥が風車に突っ込んでしまうこともあるらしい。
痛ましいとはいえ、焼き鳥を食す人も多いのだから、大目に見てもよいのでは。

かねてから強調しているように洋上風力こそ自然エネルギーの中心に据えるべきものであり、日本では洋上風力発電だけで必要電力のすべてを賄うことも難しいことではない。

残念なことに、今参議院選挙で世界で唯一日本の平和憲法を改悪できる改憲政党が三分の二を超してしまった

海外派兵する武力を持たない国へ攻撃はなく、まして平和憲法を掲げて実行している国への侵攻攻撃はないことは、戦後77年に証明される。

それが「ミサイルなどを感知する自衛隊のレーダーの邪魔」になる風力発電は取りやめれば、開戦しても死の灰の飛散は防げるのだろうか。

どんな優れたレーダーを設置してみても、日本列島に17 基地、廃炉や建設中を含め50機に近い原発が、いざ開戦となったら、どこかのミサイルや空爆や艦砲射撃を十分に防ぐことができるなどとのんきに考えるほど愚かなことはない。

東海再処理施設に貯蔵される高レベル放射性廃液でなくとも、各地の原子炉格納容器が破壊され、圧力容器も破壊され、冷却系も破壊され、メルトダウンが起こり、あるいは使用済み核燃料プールも破壊され、水素爆発や水蒸気爆発が起こっただけでも、どれほどの労働者国民の命と健康が奪われてしまうことか。

すべての原発の無条件停止と各原発の適切な即時廃炉処理と、いかなる参戦も阻止することこそが不可欠である。(原野人)

原発事故に対する国の責任

最高裁不当判決に怒りを込めて報告する弁護士

6.17 不当判決—「国策」だったのに

6 月 17 日、最高裁は4件の集団訴訟に対し国の責任を認めない判決を下しました。
責任は電力会社だけにあるのでしょうか。
原発事故被害地域は二度と元には戻らないことを、事故後 11 年半過ぎて実感しています。
あの時小学児童だった子供たちは避難先がふる里です。
高齢者は避難先で亡くなってしまった方が多くいます。
ふる里の想いが消えず生きる望みも失い 11 年過ぎた今日でも自死者が増え続けています。

責任を電力会社にだけなすり付けるのでしょうか。
国は危険な原発の建設を阻止すれば良かったではないでしょうか。
「想定外の津波」だったからとか論点をかわして 国は責任逃れをしてきました。
国策として 国民の血のにじむような税金を投入してき たのです。
原発は最も危険なものであるのは昔からわかっていたから反対運動がありました。
「核と生物は共存できない」と言われてきたにも関わらず推進してきた国に、責任がないというのでしょうか。
現生存者 への責任だけではありません。今後、何世代にも渡って被害者への責任が問われます。

消えない放射性物質

原発を稼働することにより自然界には無い多種の放射性物質ができます。

その最たるものがプルトニウム(核兵器の原料)です。
その半減期は2 万4000年であるとされますが、4 万4000 年経つとなくなることではありません。

原子炉廃棄物中の場合には他の元素がプルトニウムにかわってくるということもあり、一万年後には、はじめの量の2倍ほどに増え、その後徐々に減り出して、10万年経ってようやく6分の1になるといわれています。

原発からのプルトニウムだけではありません。
再処理工場からは、このような高レベル放射性廃棄物が何万㎥の単位で排出されてきます。
もとよりこれらは自然界に接 触させてはなりません。
20 万年100 万年にわたって、生態系から完全に隔離しなければならないということです。

現在の科学の力では放射性物質は消滅することはできませんから自然消滅を待つほかありません。
詳しくは別表「放射性物質の半減期」をご覧ください。

この綺麗な自然は放射能汚染されたままです。

原発で国はつぶれる

このような危険なものを造ったのは何故でしょうか。
「経済発展のため」と言われてきましたが、福島原発事故処理と補償だけで数十兆円もかかり、その多くは税金や電気料金から賄われ、結局財政にも国民の生活にも多大な犠牲をもたらしているではないですか。
働く国民が豊かになりましたか。
もはや日本は先進国から離脱状態でしょう。

また、プルトニウムの大量の所持は、日本で核兵器を保持することを想定しているのでしょうか。
しかし世界は核兵器開発競争で平和になりましたか。
唯一の戦争による被爆国・日本で、核爆弾の材料を大量に生み出し続けるのは、もうやめましょう。

放射性物質の半減期

β 線ー原子核から放射される電子である
α線-放射性核種が自然崩壊するとき放出される放射線
生物学的半減期ー生物の体内に沈着した放射性物質が,代謝作用や排泄作用によって半分の量に減少するまでの時間
実効半減期ー体内に取り込まれた放射性物質の量が、核種の崩壊および人体の代謝・排泄機能により減少し、半分になるまでの時間のこと

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