原発事故被害者「相双の会」会報108号が届きましたので、転載します。

福島県の市町村議会の過半数 48 議会が「反対」「陸上保管」の意見書・決議を可決した。
8割超の議会が海洋放出反対、陸上保管継続を求めています。
一方原発立地である双葉郡5町村議会は海洋放出による早期処分を求めました。
汚染水の保管が長期化すれば「復興」の妨げになるからというのです。

確かに原発立地となれば廃炉に 40 年とか 50 年とか言われています。
それでも廃炉できずチェルノブイリ原発のように原子炉をコンクリートで埋める石棺になるかもしれません。

チェルノブイリ原発は一機ですが、福島原発は4機ですから世界でも例のないことです。

しかし汚染水海洋放出は双葉郡だけの問題ではありません。
日本近海だけに収まらなく、世界の海を汚すことになる事を念頭に置かなければなりません。
すでに日本政府は韓国、中国、台湾から抗議されています。

私たちは原発事故から 10 年の長い避難生活を強いられてきましたが、国・東電は、高等裁判判決で事故の責任があると断罪されてもそれを認めず、最高裁へ上告する有様です。

汚染水にはトリチウム以外の放射性物質は除去できるように政府は説明しています。
しかしストロンチウム 90、プルトニウム、セシウム 137 等々が残留していることは説明していません。
そのことはすでに2018 年に発覚し、多くの科学者から指摘されていたことです。

政府は、韓国はじめ諸外国でも原発の排水は海に放出していると言いますが、管理された排水と、まだ状態すらわかっていない原子炉内に溶け落ちたデブリに触れた水とは全く別物です。

原発事故の賠償でも、ADRで被災者との和解を拒否する事例が現在でも続いています。

福島の漁業者はようやく10 年過ぎて本格操業になったばかりです。
国は2015 年8月に県漁連に「関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」と文書で回答しているのに、国・東電は反故にするのでしょうか。
海洋は東電の廃棄物処理場ではありません。
生きていくための大切な資源なのです。

多くの団体、個人の皆様が放射性物質汚染水の海洋放出反対の声をあげていただいたことに感謝申し上げます。
そのうちから「医療九条の会・北海道幹事会」からの抗議を紹介します。

内閣総理大臣 菅 義偉 様
経済産業大臣 梶山弘志 様

2021 年4 月12日

トリチウム汚染水の海洋放出は言語道断です
福島第一原子力発電所事故で発生したトリチウム等の
放射性物質汚染水の海洋放出は許されません

医療九条の会・北海道幹事会

政府は、今月13日に関係閣僚会議を開き「トリチウム汚染水(ALPS 処理水)を海洋放出」での処分を正式に決定する方針と報じられています。

本会幹事会は、以下の理由により、この政府方針の撤回を強く求めます。

1.【医学的に無謀な方針です】 「汚染水」に含まれる主要放射性物質であるトリチウムの健康影響を強く懸念する医学的知見があることを無視して海洋放出するという取り返しのつかない「処分」をすることは予防原則に反しています。
現状のタンク備蓄を粛々と継続しつつ、環境に悪影響を及ぼさない処理手段を追求すべきです。

2.【復興の努力を台無しにします】原発事故と震災による壊滅的な被害を乗り越えて漁業再生を目指してこられた人々に再び大きな困難をもたらします。
汚染水を海に流した場合のあれこれの放射性物質汚染の数字が政府から発表されるでしょうが、数十年にわたって、原発と放射線被ばくの安全性について政府と電力会社が真実から大きく離れる情報宣伝を行ってきた歴史を体験してきた国民の多くは、海洋放出の安全性、漁獲物の安全性について大きな懸念を抱くのは必至です。
トリチウム汚染水の海洋放出が当該地域の漁業に極めて大きな悪影響をもたらすことは明白です。

ALPS 処理水の海洋放出に絶対反対です
国民的議論もされず国民の声を無視し方針を閣議決定するなど許せません。

2021 年 4 月 10 日
原発事故被害者相双の会

政府は、福島第一原発の敷地内のタンクに溜り続けるトリチウムと、60 種以上の放射性核種を含む大量の汚染水(多核種除去設備[ALPS]処理水)を、500 倍に薄め、数十年間にわたって海洋放出するという「処理法」について「いつまでも先延ばしにできない。適切な時期に処分方針を判断する」と、繰り返し述べてきました。
そして、コロナ感染拡大の最中、4 月7 日、全国漁業協同組合連合会(全国漁連)の岸会長と菅首相が面談した上で、早ければ4月13日の「廃炉・汚染水対策関係閣僚会議」で決定する方向で「最終調整に入った」と報道されています。

全国漁連の岸会長も「絶対反対との考えはいささかも変わらない」と述べているように、反対は国民全体の声でもあります。
それでなくても事故により、大地と海洋を放射能で汚し 10 年間苦しみ地域コミュニティは壊され安心して子育もできなく、家族がバラバラの状態が続いています。
国策として進めてきた原発の責任が取れないにも関わらず、汚染水を海洋放出すること絶対許すことはできない。
私たちは下記の内容により命と健康、後世を守るために反対です。

1 福島県の各自治体は汚染水の海洋放出反対の請願書を採択しています。
にもかかわらず放出することは国民の声を逆なでする行為である。

2 放射性物質はこれで安全と言う値はありません。
確かに自然界に低線量の放射性物質はあります。
さらに医療被曝もありますが、それは避けて通る事はできません。
それでも被ばくするより被ばくしない方が良いのです。

3 薄めて海洋放出すると言うが、薄めても薄めなくても結果は同じです。
そんな馬鹿にした対応はどこにありますか、事故を起こして後処理も出来ず放出とは無責任も甚だしい。

4 海洋に放出されれば魚介類は必ず被ばくするでしょう。
それを人間はじめ他の動物が食べれば明らかに内部被ばくです。
内部被ばくすれば細胞が壊され生涯に渡って健康がおびやかされる。

5 福島第二原発は廃炉に決まっているのですから、第一から第二原発までパイプラインでタンクを補完すれば何十年分も保管できる。
その間に地下水を完全に止める。
また研究して完全に安全な値まで下げるべきである。

6 今回の暴挙が強行されるなら、福島復興の望みは大きく断たれます。
何としても中止されるよう要請します。

原発事故による強制避難地域の学校が廃校続出

南相馬小高区(旧小高町)には4校の小 学校がありましたが、2021 年3月末を持って全校廃校となりました。
原発事故前は各小学校を中心に地域の交流、行事が沢山ありました。
運動会となると子供たちの応援にじっちゃん、ばあちゃんまで駆けつける一家総出でした。
原発事故がなかったら今も続いているはずです。
今年4月からは4校合わせて一校となり新たな小高小学校と命名されます。
しかし、児童数は激減してしまいました。
原発事故前 705 人が 2021 年度 61 人、小高中学校は原発事故前 400 人から 2021 年度は 49 人です。
小高区への帰還者は既に頭打ちになり減少傾向にあるため先行きが見えないのです。
特に強制避難となった自治体は同じ傾向と見られる。
ふる里の学校が廃校となれば何万何十万人もの人々にとって、ふる里が消えることにつながります。

すでに本会報で報告しましたが、2019 年の 19 号台風により流れだした土壌を測定した結果、すでに除染した所が1万㏃以上検出されています。
国は森林の除染を認めていないので高線量の流出源となっています。
朝日新聞福島版でも4 月24 日に土砂流入による農業用ため池の線量再上昇が報じられました。

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